州の観光警察プロジェクトと、デンパサール市の地域治安助成プロジェクト(BANKAMDES)ならびにその類型についての研究を行うため、対象地域として、a)デンパサール市の北部インナーシティに位置し、最も早くコミュニティ・ポリシングが取り入れられ成功を収めたI地区、b)西部インナーシティに位置し、ジャワ島からの多くのイスラム系移民を受け入れるU地区、c)爆弾テロの現場となり、自警活動がいっそう活況を呈しているK地区を設定した。そのうえで、それぞれの地域を、コミュニティ・ポリシングが、a)一般犯罪対策、b)多文化統治、c)爆弾テロとツーリズム資本といったテーマにおける地域セキュリティの典型例と位置づけた。このなかで、b)をより適切かつ端的な事例として析出するため、テーマはそのままに、対象地域を国際空港に近く、いっそうの他文化状況をみせるT地区へと変更した。調査は平成21年6月、12月から平成22年1月の二回を実施し、市・郡警察、市民警察パートナーシップ・センターを中心に、コミュニティ・ポリシング担当官、BANKAMDES成員への聞き取りと、パートナーシップ・フォーラムの議事録、それぞれの特定問題事項解決の事例についての一次資料を収集した。州レベルのプロジェクトとしては、州警察において「安心なまちづくりプロジェクト」を推進している、JICAの現地警察改革支援プログラム専門員から資料提供を受けた。あわせて、調査結果を二回の国際学会(シンポジウム)にて報告する機会を得た。こうした研究活動のなかで、今後、治安の動的な技術たるコミュニティ・ポリシングと比較し、静的な技術たるゲーテッドコミュニティについて研究を敷衍する手がかりを得ることができた。
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