バリ島の町村レベルの自警団についての研究を進める中で、一連の締めくくりとして、国際学会と国際シンポジウムでの報告を行った。本研究企画の中心的な対象地区となったS地区からは、近隣住民組織のまとまりの構造と、その応用としての、まちづくりと観光振興へとつながるコミュニティ・ポリシングの様相を明らかにし得た。ここから導き出された議論のひとつに、コミュニティ・ポリシングがコミュニティによるポリシングであることの先に、排他的な分離主義ではなく、多様性から持続可能性へと至る水路として、ポリシングから他分野への融合可能性を担保することの重要性がある。このことを仮説命題として、より多文化的な要素をもつT地区のコミュニティ・ポリシングについての研究に歩を進めた。T地区は国際空港を囲むように存在する地区であり、世界的に有名な観光地区の背景を成す。すなわち、T地区は、観光地区における労働力・労働手段・生産物といったものがストックされ、同時に、空港の騒音や観光地区の下水を一身に受ける場所である。この地区の改良にむけたまとまりをつくる手法のひとつがコミュニティ・ポリシングであった。今後、移民労働者についてのより詳細な研究が必要とされるものの、現段階において、先の仮説について一定の検証が可能となり、コミュニティ・ポリシングについての地域社会学的可能性を提示し得た。3年間の研究の成果として、当初、現地に於いて国際シンポジウムを企図していたが、中心スタッフの異動が重なり実行不可能となったため、代替として、国際学会での報告、国際シンポジウムでの招待講演での報告を行った。今後の研究の展開として、先に挙げた移民労働についての研究と共に、国際学会報告からは居住における地域セキュリティのシステムとしてゲーテッド・コミュニティ、国際シンポジウムからは日本における町内会の活動との比較研究が示唆された。
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