平成22年度は、前年度に行った調査データの分析に基づく研究を進めた。その中で全7回に渡る研究会を行い、本補助金により購入した文献による先行研究の確認とともに、昨年度得たデータ分析に基づく成果の報告や議論を行った。 それら分析と研究会の成果として、平成23年2月に勁草書房より『外国人へのまなざしと政治意識』という書籍を出版した。その具体的な知見として例えば、現在日本では「国を愛すべし」と考える愛国主義は主として社会階層的には上層にいる人々が強く表明するナショナリズムであり、他方比較的階層が低い人々は愛国主義の主張にはあまり賛同せず、外国人の増加に反対する排外主義を主体としたナショナリズムを抱く傾向があることを示した。また排外主義は、愛国主義や権威主義との結びつきがそれほど強くなく、現代日本の排外主義が権威主義のような伝統性や保守性には還元できない要素を含むこと、一方で「日本人」の純粋性を求める純化主義と排外主義の結びつきは強いことから「日本人」という境界線を強く意識する心情が外国人を排除する意識と関連しやすいことが明らかになった。 また本研究の主題である外国人への排外性の規定要因のマルチレベル分析の成果についての分析を進めた。その知見として、まず個人レベルの変数としては、個人的な接触は外国人の出身国にかかわらず否定的な態度を弱める効果を持つこと、一方純化主義が強いことはどんな国籍であれ外国人一般に対する否定的な態度を強めることが明らかになった。また地域レベルの変数としては、中国人や南米諸国の人々の比率が高い地域では中国人や南米諸国の人々の増加に否定的な態度が増えるが、オールドカマーの多い韓国人については地域の韓国人比率が否定的な態度を高める影響がないことを明らかにした。
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