研究2年目にあたる本年度は、引き続きフィリピン在住の「日比国際児」のアイデンティティ構築過程について、a. 「日比国際児」と自己認識する/しないに至った経緯、b. 支援組織との具体的な関わりの有無を軸に、筆者がこれまでボランティア・スタッフとして活動に携わってきたマニラに拠点を置くNGO、DAWN (Development Action for Women Network)の活動への参与観察およびインフォーマル・インタビューを実施(2009年5月、8月、2010年2月)通じて考察を行った。 今年度の調査からは、1. フィリピン在住の日比国際児の間での「自助意識」の生成が顕著であること、2. それは「日比国際児」としての自己認識が、個人の水準から集合的なレベルにまで展開されはじめていること、という2つの知見が導き出された。こうした子供たち同士の集団的アイデンティ形成が、母親と支援組織との関係と、どのようにつながっているのか/いないのか、という点は引き続き考察していく必要がある。また、2009年9月に実施された日比双方の日比国際児の共同フォーラムのように両者が直接的に交流する機会も増えており、そうした機会の増加が、双方の子ども・若者にもたらす影響についても引き続き検討していく必要があるだろう。 また、本年度は当初予定していた日本国内での調査が不十分であったので、こちらは3年目に重点的に取り組んでいく計画である。
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