一人の患者に密着する形での長期的なフィールドワークを行なった。診察室での医師とのやりとりや、講演活動(体験談)などを記録し、病いの語りを分析した。その結果として、医師によるはたらきかけが生存への呼びかけとして解釈できること、また、講演で語られる自己物語が徐々に変化しており、その呼びかけに彼なりに答えようとするものであることが明らかとなった。しかし、こうした生存への呼びかけとそれに応えようとする営みが行なわれたが、彼は最終的には人工呼吸器を採用せず亡くなった。ここには、現在の社会においてもなお根深く残るALSの生き難さが端的に表れている。
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