不登校で不安や焦りを感じている子どもが来る不登校の居場所では、四つの局面(第1:諦めと休息、第2:夢中になる喜び、第3:目標との出会い、第4:仲間との共働)が観察され、その四局面を子どもがらせん状に通過しながら居場所の外に出ていく。こうした不登校の居場所は「専用の空間とスタッフ」と「場を維持するための経営」が存在する「事業としての居場所」であり、その運営を担うスタッフに着目した。スタッフの役割の大きなものは、上記四局面からなる居場所の構造を構築し修復することである。その方法は、子どもの気持ちを出発点に事後制御によって相互作用や偶然性を生かすものであり、教師が前面に立ち事前制御で偶然性を排除する学級経営とは対照的である。また、スタッフは居場所の内外を結ぶ媒介的な位置にあり、外部との交渉を担っている。実際の不登校の居場所づくりは多様なので、「学校的世界と居場所的世界の行き来」という観点から類型化を試みた。(1)補完型居場所は、親の価値観が学校に準拠し、子どもの成長の軌跡が「学校→居場所→学校」となる類型である。この類型は、できるだけ早い学校復帰を目指す小回り型(第1・2局面のみ)と、学校復帰を急かさないが将来の学校復帰を意識する大回り型(四局面すべてが見られるが、第4局面は弱い)に分かれる。(2)対抗型居場所は、不登校を機に親の価値観が学校から居場所に変わり、子どもの軌跡も「学校→居場所」となるタイプであり、四局面すべてが見られる。(3)代替型居場所は、もともと親に「既存の学校に代わる理想の学校がほしい」という気持ちがあり、子どもも居場所的世界で成長する。不登校による葛藤が小さいので、第1局面は見られない。補完型は居場所を「学校復帰の手段」「一時的な通過点」と捉えがちであるに対して、対抗型・代替型では「人生そのもの」と考える傾向がある。
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