本研究は、中高齢期の医療・保健・福祉領域における「予防」志向の強まりの内実と社会的意義(功罪)、および、その志向が中高年期の人びとの生や、その支援に関わる人々に対してもたらす影響について明らかにすることを目指すものである。以上の目的に対して、具体的には、インタビュー調査などで現場の実践を明らかにするミクロな研究と、現代社会の論理の変化や財政などの動きを追うマクロレベルの研究という二つの作業を通じて明らかにしていく。 まず前者に関して、2年目に当たる21年度は、若年認知症の人に対する予防とケアをともに実践しているデイサービスへのフィールドワークを計画し、そこから得たデータを用いて、学会等での報告を二件行った。特に本年は、データそのものの解釈というよりは、データを収集していく過程で生じた方法論的な諸問題やその反省に関して、報告するという作業を中心に行った。 後者に関しては、まず、現在のところ中心的対象としている認知症ケアに関して、昨年度収集した日本や欧米の政策的動きに関する書資料の整理を行った上で、22年度中の報告に向けて準備を進めている。また、本研究が、支援・ケアに関する社会学においてどういった位置づけを占めるのかということを中心に関連研究を位置づけるような報告を家族社会学会にて行った。この報告は論文化される予定である。 以上のように、本年はデータを収集・整理しつつ、本研究の方法の反省、研究上の位置づけに関する考察などの作業を中心に行った。
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