本研究の目的は、研究者養成のプロセスにおける階層的格差の実証及び経済的・文化的な意味での階層的参入障壁の析出であった。一その際、ジェンダー・パースペクティブを導入した。具体的には、研究者養成における階層的な格差の実証と、そのプロセスにおける参入障壁を析出することであった。したがって、本研究の対象となるプロセスは、学部教育から大学院教育、ポスト・ドクターまでとし、分析は、ジェンダーと階層の2つの軸を設定した。まず、参入障壁について、選抜のプロセスにおける選抜される側の障壁をインタビュー調査によって析出することを試みた。平成20年度は23名に調査を実施し、まずは経済的要因が大きな影響を与えているということが浮き彫りにされた。また、ジェンダーによる差異、いくつかの類型が明らかになった。しかし、これらのワンショットのインタビュー結果の分析のみでは、大学教育が個人に与える影響を十分に析出できないと考えた。そこで、平成21年度は、平成20年度に1年生であった学部生や、専門課程や大学院に進学した学生を対象に、追跡調査を行った。条件に該当し、インタビュー調査の協力が得られたのは4名であった。その結果、1年間の間の個人の行動と環境の変化による影響が明瞭になった。また、平成21年度は、ほかに新たに5名のインタビュー調査を行った。これらの調査の結果については、今後順次公表予定であるため、本文では詳述を避けることとする。
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