本申請研究は、被災地から被災地への「助け合いの連鎖」、支援者と受援者が相互に入れ替わりうること等を念頭におきながら、以下の(1)(2)の課題に取り組むものであるが、本年度は、当初掲げた計画をほぼ実行でき、かつ計画では想定していなかった成果を出すことができた。特に、研究を進めていく過程で、活動実践者(災害NPO等)との対話の場を設け、研究者が構築した概念を現場の視点から批判的に検討してもらえたこと、また実務家(市民事業を実施するNPO)が主催する市民事業の作品展・交流会の企画運営に参画し、研究の成果を実践につなげる実務にも関わることを通じて、研究と活動実践を往復しながら成果を出していくプロセスを経験できたこと、等は意義深かった。 以下、それぞれの課題ごとに成果を記す。 (1)新たな解釈枠組みの構築 : 「共同性」概念による「共助」概念の再検討 文献レビューを通じて、災害ボランティア活動が成立し、繰り返されていく論理を「相互性の論理」という概念で説明することを試みた。さらに研究者・実務家・実践者らと「円卓会議」を開催し、こうした災害ボランティアに関する論文を持ち寄り、それぞれの著作や現場での課題について意見交換を行い、この分野で創り出してきた概念の検討等も行った。 (2)将来の課題解決に資する手法の提案 : 市民事業の分析を通じて 調査協力団体と定期的に勉強会を開催し、平成19年度に実施した市民事業従事者の活動実績データの収集・分析を進めている(来年度も継続)。今年度はその中間的な報告を学会発表等で行った。さらに調査協力団体が主催する市民事業作品の展示・交流会の企画・運営に研究成果を活用してもらい、従事者と直接接し、この事業の意義や見えていなかった課題を確認することもできた。
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