本年度も昨年度に引き続き、積極的に活動実践者(災害NPO等)との対話の場を持ちながら研究活動を進めた。研究者が構築した概念を現場の視点から批判的に検討してもらう一方、学術的な活動と社会的な活動との連携についても、踏み込んだ試みを行うことができた(→学会発表)。 以下、本研究の柱となる課題(1)(2)の実績概要を記す。 (1) 新たな解釈枠組みの構築:「共同性」概念による「共助」概念の再検討 研究者・実務家・実践者らと特定のテーマ(災害ボランティアの文化、専門職との連携)について不定期に勉強会を持ち、ここでの議論を研究につなぐことを試みた。まず「災害ボランティア文化」に関しては、勉強会を通じてこの分野で創り出してきた概念の検討を行ないながら、阪神・淡路大震災から15年間の総括と展望を行なった(→備考)。さらにここから「受援力」「回復力」という概念を見出すことができたので、来年度以降、掘り下げていく予定である。また「専門家と市民ボランティアの連携」についても、実務家・実践者の協力を得ながら、中越沖地震後の応急復旧に関わる活動実績データの分析を行い、連携による効果的な活動の可能性と今後の課題を指摘した(→学会発表)。 (2) 将来の課題決に資する手法の提案:市民事業の分析を通じて 今年度は、昨年度の中間報告を発展させる方向で、市民事業の需要サイドに注目し、被災からの日常化の中で生じるニーズをターゲットに事業を組み立ててきた神戸の市民団体の協力を得、その4つの事業の活動実績データを収集・分析し、事業を支える中軸となるコンセプトを見出すことができた(家庭の市場化・公益化、もう一つの社会システムの構築など)。来年度も調査協力団体との勉強会を継続し、この分析を進めていく予定である。
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