「現代日本の家族構造と親族関係」をテーマとする本研究は3年計画であり、その2年目にあたる本年度は、文献探索を行うとともに、「現在の家族観・親族観に関する定量的調査」および「子育て期における祖父母との関連に関する定量的調査」を実施した(ひとつの調査で両テーマを関連づけて実施)。 この調査の具体的特徴および成果は以下の2点である。 1. 文献探索および昨年度に実施したインタビュー調査をもとに、調査項目を選定。そのなかで子育て期の親への質問紙調査のみならず、その祖父母への質問紙調査の必要性が明らかになり、急遽、二つの調査票を用いた調査へ調査プランを変更し、保育園の協力を得て調査を実施した。 2. 調査項目の選定および調査対象の選定を入念にするなど、調査の準備に時間と労力を注いだため、調査データの本格的な分析は次年度の課題となったが、2つの立場(親と祖父母)の調査票調査が実施できたことにより、家族および親族関係を明らかにする上で不可欠な「新しい」タイプの情報を入手することができた。この点は、本研究の独自性を一層強めるとともに、問題解明への大きな足がかりを与えてくれるものと期待できる。 また、伝統家族に関する著作を出版するとともに、近年出版された現代日本の家族・親族に関する文献をレビューした。レビューの結果、既存の研究では、伝統的家族・親族関係を無視した現代家族の研究が中心となっており、現在の家族状況が適確に把握できないことがあらためて確認できた。伝統をふまえたうえでの、世代を超えた調査データによる分析の重要性が再確認できた。 本年度は、伝統家族に関する著作を出版することができた点で、また現代に関する独自の調査が実施できた点で、極めて有意義であったと総括できる。
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