本研究課題の最終年度に当たる22年度は、昨年度の調査票調査の追加調査を実施し、両調査を総合的に分析・考察した。そして研究課題への一定の解を得るとともに、今後に向けた課題を明確にすることができた。 具体的には、大阪市内の保育園に協力を依頼し、園児の保護者および彼らの祖父母を対象に子育て状況と子育て支援、家族・親族関係に関する意識についての調査を実施し、保護者票206枚、祖父母票91枚を回収することができた。子育て中の親世代のみならず、子育て支援の中心的存在である祖父母世代からも家族意識や家族状況・子育て(支援)状況を調査できたことは、家族・親族関係を考察する本研究にとってたいへん意義深いものであった。 この調査の一次的な分析により、親族の中では近居の妻方祖父母が子育てを中心的に支援していること(逆に妻方祖父母が近居できない場合には親族支援が希薄になること)、支援可能な親族の範囲は極めて狭いこと、家の継承などの意識と子育て支援は「意識」としては関連性が弱いことが明らかになった。生活条件の諸制約により都市では近居の可能性が高く同居の可能性が低い点は筆者らの15年前の仮説が検証できたことになるが、近居の対象が夫方から妻方へ移行していることは15年前には見られなかった点であり、近年の特徴といえよう。この状況だけをみると、夫婦家族社会の親族関係との類似性が見いだせるが、支援が横の親族関係や友人関係に拡大せず、祖父母に限定される要因は直系家族的特性の延長にあるのか、それとも極めて自立性の強い家的特性の延長にあるのかなど、今後の比較研究に残された課題といえよう。また、保育園児の保護者と祖父母という対象は全体から見れば一部の「特殊」な状況にある親族関係を調査したことになる。今後は調査対象を拡大し、より一般的な家族・親族関係の解明をおこなうことも残された課題である。
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