本研究の目的は、コンパクトシティ政策の形成・展開過程とその社会的インパクトを比較社会学的に考察することにある。とくに、これまで社会学の分野で十分に扱われてこなかったコンパクトシティ政策について、日本およびドイツ等のヨーロッパ地方都市における事例の比較分析を通して、政策の形成・展開過程における諸主体の合意形成や市民参加、政策の社会的インパクトを解明することを課題とする。 初年度に当たる本年度の研究は、主として基礎的調査と関連資料の作成を中心に実施した。 まず、コンパクトシティを中心に、EUおよび欧米の主要地方都市におけるサスティナブルシティやアーバンヴィレッジ、トランジットビレッジなどの諸概念/諸政策の展開過程とその特質について、文献資料をつうじた整理と検討を開始した。あわせて、都市工学や都市計画学をはじめとする関連領域の先行研究のレビュー作業を行い、EU諸国のコンパクトシティ政策の枠組みと対象地域の政策動向に関する資料収集とその整理を行った。 つぎに、ドイツ・フライブルク市にフランス・ストラスブール市において、コンパクトシティ政策と公共交通政策の展開および現状について、現地での予備調査ならびに資料収集を実施した(9月)。さらに、日本国内の事例(富山県富山市、石川県金沢市など)のまちづくりや都市政策に関する資料収集を開始している。 上記の成果を踏まえて、調査に関する暫定的な見取図(比較表)と時系列的な展開図を作成し、次年度の本格調査に向けた作業仮説の検討を進めている。あわせて、地域再生と協働に関する研究論文を作成中である。
|