本研究の目的は、コンパクトシティ政策の形成・展開過程とその社会的インパクトを比較社会学的に考察することにある。これまで社会学の分野で十分に扱われてこなかったコンパクトシティ政策について、日本およびドイツ等の海外地方都市におけるまちづくり事例の比較分析を通して、政策の形成・展開過程における諸主体の合意形成や市民参加、政策の社会的インパクトを解明することを課題とする。 本年度の研究は、主として現地調査と関連資料の収集を中心に実施した。 まず、昨年度に引き続き、日本国内の事例(富山県富山市、愛媛県松山市)のまちづくりと都市政策に関する資料収集を展開した。とくに、富山市におけるLRT/LRVについて、計画決定から実施に至る政策過程の分析を進めるために、関連するアクターへのインタビュー調査を行った。あわせて、政策による社会的インパクトを解明するために、上記施策と連動して展開している地元のまちづくり活動について、「政策と運動(活動)の相互作用」という視点から活動のリーダー層への聞き取りと、マスメディアの報道資料の収集を実施し、調査結果の分析と整理を行った。 つぎに、海外の事例として、ベトナム・ミトー市および周辺地域において、発展途上国の近代化と都市・農村関係の変容、環境悪化や経済格差などの社会問題、ライフスタイルの変化、地域住民組織の動態と機能に関する現地調査を開始した。 上記まちづくりと住民活動に関する研究成果の一部は、雑誌論文(1件)と図書(1件)として公表されている。次年度(最終年度)は、各調査対象の補足調査を行ったうえで、事例の類型化と比較分析を進め研究報告をまとめる。
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