本研究の目的は、コンパクトシティ政策の形成・展開過程とその社会的インパクトを比較社会学的に考察することにある。これまで社会学の分野で十分に扱われてこなかったコンパクトシティ政策について、日本および海外の地方都市における地域づくりの事例分析を通して、政策の形成・展開過程における諸主体の合意形成や市民参加、政策の社会的インパクトを解明することを課題としている。 本年度の研究は、おもに、海外の事例として、ベトナム・ミトー市および周辺地域を対象に、主として農村地域の近代化と都市・農村関係の変容、ライフスタイルと生業の変化、地域づくりと環境保全、地域住民組織の動態と機能に関する現地調査を実施した。具体的には、リーダー層を中心とする住民への聞き取り調査を行ったうえで、さらに特定地区の全戸(37戸)の代表者を対象とした調査票による意識調査を実施した。その結果、農薬や化学肥料等の多用に伴う地域の生活環境、とくに水路等の水環境の汚染が強く意識されているものの、その管理や改善については役場に委ねる傾向が強い(ただし、20代・30代の若年層では、住民主体で管理すべきとする層も一定程度存在している)、約半数の回答者が主として経済的理由から子どもに農業を継いでほしいと考えていない、地域住民組織(ApやTo)は存在するものの行政の下請け的自な性格が強く、環境管理や地域づくりを担うような自主組織としては機能していない、などの課題が浮かび上がった。 上記に関する研究成果の一部は、雑誌論文(1件)にて公表されている。
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