研究概要 |
本研究では、観光化・地域活性化した地域で特徴的に観察される、流動性・移動性の高い社会的集合に着目し、この集合を構成する人々の社会的動態、社会的性格や機能、地域社会との相互作用の実態について、社会学的アプローチによる調査研究からの実証的な究明を目指した。調査結果から、流動・移動性の高い社会的存在とは、Iターン・新規住民などの新規定住者、および季節労働者などの一時的定住者から成る集合であり、現代の地域社会を構成する特徴的な要素として地域社会を読み解く重要な因子であることが明らかとなった。来住者・一時的定住者、および彼(女)らを受け入れる地元民への聞き取り調査から、彼(女)らの個別の生活世界を浮かび上がらせるとともに、宿泊業主への質問票を用いた量的調査によって、彼(女)らの一般的・平均的な社会集団としての像を浮き彫りにした。彼(女)らは比較的年齢層の若い集団であり、伝統的宿泊業主にも非伝統的宿泊業主にも家族経営の宿泊業の構成員として受け入れられ、彼(女)らに対する配慮がなされるなどの社会関係が明らかとなった。 これらの研究成果の主なものとして、前年度までに行ってきた量的調査・質的調査の分析を踏まえ、平成22年7月に国際社会学会(VXII ISA WORLD CONGRESS OF SOCIOLOGY,Gothenburg)において研究発表を行った("Local community in a mountain village and the life course of youth in Japan")また、11月には第83回日本社会学会において研究発表を行った(「観光地における非典型労働者の地域的受容過程(1)」)。研究結果については調査地に対しては平成23年2月に報告書を作成して調査協力者に送付した。また、以上の研究についてまとめたものを論文として発表した(羽渕一代・井戸聡「若年流動層の地域的受容-白馬村の宿泊業調査-」『人文社会論叢(人文科学篇)』25号、弘前大学人文学部、平成23年2月)
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