この研究で得られた知見は、以下の通りである。第一、植民地の歴史をめぐって日韓の解釈が相違するなかで作られた在朝日本人に関する映像は最初から日韓の間で受け入れやすくするため、さまざまな編集が行われた。第二、それらの映像は日韓の間で通用する「普遍的価値」を強調するため、主人公を女性とし、母性や恋愛をテーマにすることで歴史の解釈の相違からくる批判を免れることができた。第三、これらの映像は1965年の日韓国交正常化の前からすでに制作されたが、日韓両国で上映されるには「在日」映画人たちが大きくかかわったことも明らかになった。しかし、本研究では在朝日本人の映画経験や1960年代に日韓で活躍していた「在日」映画人の実態を探ることができなかったが、これからの研究課題とする。
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