計画2年目となる2009年度は、1年目に引き続き(1)「交通」を社会学的に考察するための理論的枠組みや方法論の検討を行うこと、および(2)1年目の成果をふまえ、より詳細なレベルでの聴き取り調査(質的調査)を実施することに加え、(3)外環道の沿線住民の意向を把握するため、アンケート調査(量的調査)の実施を予定していた。このうち(1)については、文献の整備が進み、多くの先行研究を検討することができた。また(2)については、2009年度になってから住民運動団体の新たな活動が見られたことから、実際の活動の現場に赴き、インタビュー調査や議論の場の傍聴などを行って主体の布置連関について整理するとともに、団体が発行した文書資料(チラシやミニコミ紙など)の収集・整理を行うことができた。しかし(3)については、当初計画と大きなズレが生じた。2009年度開始当初は、8月ないし9月頃にアンケート調査を実施する予定であったが、まさにその時期の衆議院選挙の結果によって、外環道を含めた道路整備について大きな変更が見通される事態となった。そのため、聴き取り調査協力者から「現在、沿線住民は外環道について非常にナーバスになっているため、アンケートは実施しないほうがよい」との助言を得た。その後、実施について慎重に見極め作業を続けた結果、年度が改まった2010年5~6月頃の実施が妥当であるとの結論に至った。また、結果的にはアンケート内容の充実を図ることができた。反面、アンケート調査の結果を前提とした研究成果の発表を想定していたため、2009度は学会報告などの成果を上げることはできなかったが、上記の多くの蓄積をふまえ、2010年度に成果のとりまとめを複数の媒体で発表・公表する予定である。
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