これまで収集してきた資料の整理と分析を進める一方で、デュッセルドルフでの聞き取り調査も8月末と2月に実施し、あわせて子どもたちの授業の様子も参観した。2009年9月3-5日にドイツ・ベルリンで行われたヨーロッパ日本語教師会の大会・シンポジウムに出席し、近接する学問分野の研究者や、同じ問題関心を持つ日本語教師らとのネットワークづくりを行った。ヨーロッパ各地でおもに日系の子どもたちを対象に日本語を教えている方々の声を聴く、またとない好機であったばかりでなく、実際に使用している教科書や、その利点や改善点などについても詳しく話をきくことができた。それによって、あらためて本研究が射程におくイシュー、すなわち狭間の文化圏に生きる子どもたちの文化的・言語的帰属意識とローカル・アイデンティティとの関係性への着目が重要だということを確認できた。今後、研究のまとめをしてゆくなかでもっとも有意義な活動のひとつであった。 さらに、昨年度にひきつづき、第2回「多文化・多言語環境のなかの子ども研究会」を2009年7月27日、獨協大学において開催した。今回は、ハイデルベルク大学講師でドイツの異文化教育を専門とするエスヴァイン・三貴子博士に「ドイツにおける教育参加と制度的差別--異文化間教育のあたらたな地平を求めて」と題した研究報告をしていただいた。そこでは、移民教育をめぐってドイツが置かれている状況と最新の研究動向についての知見を得ることが出来た。
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