最終年度として、今年度はこれまでの研究・調査をまとめると同時に、その研究成果を多角的に検討する方向性で研究進めてきた。できるかぎり実際の「現場」に足を運び、そこでの教師らの声を聞くことを目的とした。 日本国内の視察・見学としては、2011年4月24~25日と2012年3月19日に、龍谷大学社会学部の岸政彦准教授および群馬大学教育学部の松尾隆司助教の協力を得て、それぞれ滋賀県愛荘町にあるブラジル人学校、そして群馬県太田市のブラジル人学校およびブラジル人コミュニティを訪問し、知見をふかめた。これによって、日本における外国籍児童の教育の現場を訪れ、先生方から聞き取りをし、生徒らの学習の様子を知ることで、ドイツにおける日系児童の学習環境との比較考察が可能になった。 学会・研究会については、2011年8月23~29日、タリン大学(エストニア)で行われたヨーロッパ日本語教師学会および、東京学芸大学国際教育センター主催第5回国際教育センターフォーラム「グローバル時代における子どもの文化間移動と教育-内外の補習教育を通して-」(東京)への参加が意義深い。前者の開催期間中には、かねてより共同研究を企画してきた研究者たちとも、今後の打ち合わせを行うことができ、後者では日本語教育に関連する分野の研究者との有意義な情報交換を行えた。結果的に、多文化社会における「国籍」や「(日常的に使用する)言語」の問題を、ナショナルな枠組みだけで論じる視点だけではなく、「ローカルなアイデンティティ(ローカリティや地元意識など)」に着目する必要性(もしくは視座の転換)を強く意識し、より実状に即した議論ができる土壌が整ってきた。 以上、今年度の研究成果とこれまでの成果とをまとめた業績は、現在執筆中の論文「多文化共生社会におけるローカリティの役割」(仮題)としてちかく獨協大学国際教養学部紀要に発表する予定である。
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