本研究の目的は、常磐炭砿の社内資料をもとにして、経営者がいかに採炭業の終焉にむけて、ソフトランディングをはかっていったのかを、あきらかにすることである。1971年磐城砿業所の閉山では、職員を含めて実に4700人の炭鉱の労働者が失業を迫られることとなった。しかし、その後の追跡調査によれば、その後離職者たちは、大多数が順調に次の職をみつけ、比較的安定したキャリアをたどったことがわかっている。常磐炭砿の閉山過程を詳細に分析することで、労働力の移動を容易にした要因を明らかにしたい。今年度は、すでに電子化された社内資料の整理と分析を行い、有益な資料についてのインデックス (冊子) を作成した。全国の炭田との比較をするために、北九州・北海道のいくつかの旧産炭地について視察・聞き取りを行った。また常磐炭田の閉山前後の社会構造の変化を、人口や産業について、地域別のマクロ統計から分析するための基礎資料を収集した。常磐炭田では、閉山前から新産業の誘致が行われており、系列企業への人員の転換が進められていた。閉山の地域社会へのインパクトは甚大ではあったが、比較的早期に回復しうる他の炭田にない特性があったといえる。
|