様々な社会的ネットワークの指標のうち、地位ジェネレータ、資源ジェネレータなどについて、群馬県桐生市、大阪府吹田市、東京都世田谷区といった都市度の異なる地域データを比較し、検討を行った。社会的ネットワークの規定因については、地位ジェネレータによって測定されたネットワークに対して、都市度が高いほど、年齢や学歴の効果が強くなる傾向が見られた。また、生活満足や階層帰属などによって表される生活の質に対して、社会的ネットワークが一定の効果を有していた。都市度・社会階層と、社会的ネットワークとの関連の大きさについては、都市社会学の文脈では都市度の効果が強めに分析結果に表れ、階層論の文脈では社会階層変数の効果が強めに分析結果に表れるという興味深い傾向があるが、この点についても地域調査データと全国調査データを用いて分析を行った。複数の地域調査データを集めての比較分析と、全国調査データをサンプリング地点の人口規模などによって都市度へ分ける比較分析とでは、都市度として用いられる変数の中身が異なるため、都市度の効果の強さについては、慎重に解釈すべきであることが示唆された。都市度に関連する形でネットワークへの諸変数の効果の大きさが変わる点や、ネットワークへの都市度の効果の大小が調査枠組みによって異なる傾向については、より様々な都市度の地域データを含める形で慎重に分析を行う必要がある。そこで東京都府中市において実施した無作為抽出郵送調査(n=716)を新たに加え、都市度、人口分布、職業分布、特徴が異なる地域調査についての比較分析ができるようにデータ整備を進めている。
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