1.本研究は、「女性職」の職場組織において、(1)どのようにジェンダーが織り込まれているかといった実態の把握とともに、(2)ワークライフバランス(仕事と生活の調和、以下WLBと略)の実現に向けた組織文化の変容可能性とそのメカニズムを、特に柔軟な勤務体系の導入という人事管理上の変更をめぐる組織主体間の相互行為に着目することを通じて明らかにすることを目指している。 2.この目的を達成するため、柔軟な勤務体系の導入とキャリアの継続との関連性がすでに数量的研究によって明らかにされつつある看護職場を対象として選定し、事例研究の手法を用いる。具体的には、インテンシブなインタビュー及び非参与観察に基づく組織の質的分析を実施する。 3.本研究は3年計画の初年度である20年度に育児休業等中断を行い、21年度半ばに同中断より復帰したため、22年度は前年度に引き続き、予定していた(1)文献研究、(2)理論的枠組みの構築、(3)予備的調査の実施のうち、主に(1)、(2)を実施した。 4.看護職場における先行研究からは、ア.看護職は24時間サービスに基づく交代制勤務、少ない有給休暇取得などの長時間労働に従事しており、その背景には組織内において「男性の正規従業員」モデルを「あるべき姿」としてきた傾向がみられること、イ.そのため離職者が多く、特に結婚・出産を機とした離職がみられること、さらに就業を継続した場合には(1)日勤のみのパートタイマーでの外来勤務、もしくは(2)産休復帰後より病棟勤務で交代制勤務に従事するといった二極化がみられること、がよみとれる。このような傾向がいかに構築されてきたのか、また短時間正職員制度といった柔軟な勤務体制の導入は「男性の正規従業員」モデルや出産を機とする勤務の二極化にいかなるインパクトを与えるのか、さらに理論的枠組みを精査し、予備的調査を行う必要性が示唆された。 5.以上の検討結果を受け、次年度以降、看護職場の普遍性・特殊性に配慮しつつ更に調査研究を継続することによって、本研究課題の解明に引き続き努めていきたい。
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