今年度はボド運動と関係する民族衝突に焦点を絞り、資料収集と現地調査を行った。資料収集に関しては、2000年にコクラジャル県県長官が国内避難民の再定住のために提出した報告書を入手し、アディヴァシと呼ばれる他州から移住した先住民族や、ムスリムの間の被害の全容を把握することができた。2010年8月、2011年3月にわたって8つの避難民キャンプを訪れる現地調査を行い、紛争の詳しい経緯と国内避難民となっだ生存者たちの現状を知ることに務めた。また、こうした避難民地域において活動するNGO関係者に対してインタビューを行い、官公庁の資料から得ることのできないさまざまな行政による支援の不足に関する情報を得た。 また、コクラジャル県での聞き取りでは、衝突のあった当時学生団体のリーダーを務め、その後国会議員ともなったU.N.Brahma氏に長時間にわたってインタビューを行い、当時の政治的状況や運動に関する貴重な一次資料を得ることができた。また、コクラジャル県、ボンガイガオン県、シラン県の県長官にインタビューを行い、各県の避難民の状況についてデータと概要を得た。 成果発表としては、日本平和学会ではボド民族の森林地帯における違法伐採や武装勢力の活動について報告を行った。また、ディブルガル大学のセミナーにおいて、ボド民族紛争においてターゲットとなっているムスリム移民の土壌浸食による土地喪失と再定住に関する調査報告を発表した。また、インド北東部という第三世界を視野に含めた(国際)社会学のあり方について、日本の論文を発表した。
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