本研究の目的は、サブカルチャー集団の地域社会への参加の様態を、茨城県中央部で活動するロックンロールと呼ばれるサブカルチャー的活動を行う集団を対象に、活動場所の獲得そしてその維持に関して地域社会との交渉を通じた社会参加へのプロセス、および活動を通じた下位文化的なネットワークの形成、そしてそれ以外の社会生活との関連を明らかにすることである。本研究では、主にフィールドワークを中心とした現地調査、および新聞・雑誌のテクスト分析を併用し、データの収集と分析を行うものである。 平成21年度は、20年度から発展し、ノンエリートの若者下位文化とロックンロールの歴史に関する文献調査と、茨城県中央部のロックンロール・チームヘのフィールドワークを実施した。文献調査は主に1960年代を中心に雑誌および新聞を対象に行った。文献調査では、アメリカ文化の受容の主体としてノンエリートの若者は、アメリカナイズされた成功物語の主役として賞賛される一方で「野蛮」な文化を消費する主体として非難されていたことが明らかになった。 フィールドワークでは、ロックンロール・チームの中には、次第に活動が困難を来す状況にあることが確認された。こうしたチームは主にメンバーが狭い地域の出身者で結成されていることが特徴的で、少年時代に形成された地元の「先輩後輩」を背景に、年間を通した活動を希望するメンバーと暴走族時代の夏季限定の活動を希望するメンバーとの間に齟齬を産まれ、チームの維持が困難になっている。また、ロックンローラーがパフォーマンスを行う祭りの主催者(地元商店会、水戸市観光協会)側への聞き取り調査で、ロックンローラーの活動に対して次第に好意的な理解者が出てきた反面、暴走族がロックンロールを踊っていた時期に生じたネガティブなイメージから、ロックンローラーを排除する層が根強く存在していることが明らかになった。ロックンローラーは、活動を通じて主催者側の理解者を増やすため、一層のルールの遵守と意志の統一を図る方針をチーム間のミーティングを通じて打ち出した。
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