本年度は、当初の研究の目的を達成するため、研究実施計画に照らし2度の社会調査を実施した。また、1度の学会報告を行い、2本の研究論文を執筆・公表した。 社会調査は、8月にイギリス、11月に北海道において実施した。イギリスでは、同国を代表する旧産炭地域であるノッティンガムとその周辺地域を訪れ、同地に設置された博物館を訪問するなどして、現地の状況に関する情報を収集した。また、オックスフォード大学において、関連する学術情報の収集を行った。北海道では、赤平市や歌志内市を訪れ、市役所等へのインタビュー調査を実施するのと同時に、研究の目的に関連する施設等を訪れ、情報の収集を行った。 1本の学会報告は、過年度分も含めた研究成果を集約し、とくに旧産炭地における炭鉱の閉鎖が、自治体財政を圧迫していくメカニズムをフローチャート化して提示した。研究論文のうちの1本は、これを論文化したものである。研究論文のうちのもう1本は、イギリスにおけるこれまでの調査結果を集約したものである。旧産炭地を抱える自治体の財政問題を考えるにあたり、同国とわが国の地方行財政制度の違いに注目することが重要であるとの知見が得られていたことから、双方の地方行財政制度の違いを整理したうえで、旧産炭地の振興策や自治体財政の状況などについて論じた。その結果、イギリスの地方自治体はわが国に比べて財政上の権限は大きくなく、炭鉱の閉鎖による影響が自治体財政に直接的に影響を与える程度は、わが国と比べると限定的であるとの知見が得られた。
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