研究の目的は、食習慣に起因する「健康リスク」(健康を害するリスク)の認知と、そのリスクを回避することを目的とした行動(健康行動)に影響を与える変数とは何かを明らかにすることである。そのため、本研究では管理栄養士(栄養指導を行う専門家)、栄養指導の対象者(素人)をインフォーマントとしたインタビュー調査を実施し、具体的変数を明らかにするとともに、「健康リスク」の認知・回避行動の差があるのか否かを検証する。 平成20年度に実施したインタビュー調査について、平成21年度はデータ処理を行い、データ分析を開始した。専門家から得られたデータと素人から得られたデータをつき合わせ、異同を明らかにすると同時に、それぞれの特徴や両者の語りに注目し、それが専門家と素人のコミュニケーションに由来するのか否か分析を進めた。その結果、専門家と素人では、各食品に対する価値判断が異なり、またそうした価値判断と当該食品の摂取との関係は一律的ではないことが明らかになった。また、健康に益する食品として健康食品等の摂取を心がける対象者は半数以上に上ったが、健康食品の捉え方、健康食品を摂取する理由として、栄養学とは異なる素人の知識が存在することが明らかになった。どちらも、従来の研究では明らかにされておらず、今後は上記の点に絞り、論文執筆に取り組む予定である。
|