本研究の目的は、第一に、戦後の日本社会における高齢者政策の歴史的文脈を俯瞰した上で、それらの歴史的・政策的文脈のもとにあって、様々な高齢者関連団体・組織などをはじめとする各種団体・組織はいかなる活動・要求・異議申し立てなどの実践を行ってきたのか、そして、それらの団体・組織の実践を通じていかにして政策は変容してきたのかを実証的に明らかにする。第二に、そうした歴史的・政策的文脈と各種の団体・組織のせめぎあいを通じて、あるいはせめぎあいの中にありながらも、戦後日本社会の<老い>と<高齢化>をめぐる表象と記憶は形成されてきたのかを解読することである。要するに、私たちはいかにして戦後日本社会における<老い>と<高齢化>を語ってきたのかを明らかにする。 上記の目的を達成するため、平成21年度は、平成20年度に引き続き、戦前ならびに戦後日本社会における<老い>と<高齢化>をめぐる言説を広範かつ詳細に明らかにするためにも広範な先行諸研究の文献研究を行った上で、こうした広範かつ長期的なレビュー作業を下地に論文を完成させた(研究成果参照)。また、これらをもとにした論考を平成22年度中に複数の単著・編著を刊行する予定である。 加えて、上記の高齢者関連組織・団体による政治的・社会的活動を広範かつ長期に調査した上で、当該組織・団体のメンバーあるいはスタッフへの直接面接法を中心とした緻密な調査を実施した。また、戦後日本社会において、とりわけ1970年代以降における社会政策・社会保障制度に関する先行諸研究を概括し、その歴史的な展開と政治性を論考している。これらは平成22年度中にまとめられることになる。
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