本研究は、D. ブーアスティンが提起した擬似イベント論を再考察して、その概念の可能性と限界を明らかにし、メディア時代の集合的リアリティの生成プロセスを観光行動とメディアの相互関係において実証的に分析することを日的とする。 具体的には米領グアムを中心とするミクロネシア地域に着日し、同地域における日本人の観光行動の歴史と観光ガイドブックの変遷を分析している。申請初年度にあたる本年では、とくに1980年代から今日まで日本人の観光において重要な役割を果たしてきた「地球の歩き方」の制作過程とその誌面内容について、同メディアの制作者への聞き取り調査とその内容分析をおこない、ミクロネシア地域における日本人の観光行動とガイドブックが取り結んできた関係性について歴史社会学の視点から考察を試みた。またハワイ大学とグアム大学で所蔵されている史料をそれぞれ現地へ訪問して収集し、1960年代中盤から始まった米領グアムにおける観光開発の「基本計画(master plan)」と、同時代におけるメディア報道について、新しい知見を得ることができた。ただし1980年代以降の米領グアムに関する資料、および米領グアム以外のミクロネシア地域に関する資料については現段階では十分に入手できていないため、さらなる体系的な資料の収集と分析の作業が必要である。 本年度の成果は、申請2年目にあたる2009年度において論文として公刊し、また同年11月には人文地理学会で学会発表をおこなうことを決定している。
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