研究概要 |
本研究の目的は,東アジア諸国・地域(主に日本,韓国,中国,台湾)における福祉諸制度・政策を,「遅れてきた福祉国家」という視点から比較分析し,従来の比較福祉国家研究の限界を乗り越えるための新しい理論構築を目指すものである. 本研究の最終年度である2010年度には,いままでの理論研究と現状分析の成果を総括するとともに,それをふまえて,新しい課題に取り組んだ。 (1)いままでの研究成果の総括としては,3年間行ってきた日本・韓国・中国・台湾の歴史・現状分析と比較福祉国家研究の新しいアプローチについての検討をまとめ,学会報告として,「比較福祉国家研究における類型論と段階論-新しい分析枠組みの模索」を発表した。本論文は,2011年度に正式に刊行される予定である。 (2)新しい課題としては,いままでの比較福祉国家研究から論点を絞って,若者の雇用/失業・貧困問題とその対策について,日本・韓国・中国・台湾を中心とする国際比較分析に取り組んだ。その結果,「日本と韓国における失業・貧困対策--二層体制の歴史的・構造的特徴」「韓国における若者の生活困難と社会保障」「若者の貧困と社会保障--日本・韓国・台湾の福祉国家体制への示唆」などの論文を発表した。また,近年注目を集めているディーセント・ワーク論の立場から,近年の若者問題に対する政策論的な課題を見出す論文として「社会保障からみるディーセント・ワークの課題--日本の現状と今後」を発表した。
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