本研究は、自閉症スペクトラムの子どもたちへの早期発見・早期療育にあたって、地域の保健師・保育士・幼稚園教諭のスムーズな連携によるチームアプローチ実現のためのデータベース構築を目的としている。具体的な研究の目的は以下の3点であった。(1)発達障害の子どもたちの早期発見・早期療育を地域レヴェルで実現するために、地域の保育・教育・福祉現場の専門職(保育士・幼稚園教諭・保健師)が、発達障害に関する正確な共通認識・共通理解を持ち、自閉症スペクトラム児への早期発見・早期療育のためのチームアプローチの必要性を認識し、適切な支援をできる基盤を構築し、発達障害児及びその家族に対して専門職によるチームアプローチでサポートしていく必要がある。(2)乳幼児期に行動特性が出現する自閉症スペクトラムを対象に、早期発見・早期療育のために、地域の専門職によるチームアプローチに必要な自閉症スペクトラムの特性を整理・分類したデータベースの構築を目的とする。(3)職種の異なる専門職(教諭・保育士・保健師)が正確な知識や自閉症スペクトラムの子どもたちへの支援の理念を共有するために、乳幼児期の自閉症スペクトラムの行動特性から、支援の基盤となるようなマニュアルを作成する。 昨年度に引き続き本年度の成果は、上記3点の目的を達成するための基盤を設定したことにある。具体的には、(1)国内外の事例及び情報を収集した。特に自閉症スペクトラムをもつ子どもと家族への支援の先駆的な地域に積極的にアクセスし、地域の保育・教育・福祉現場の専門職の連携に必要な要素を検討した。(2)自閉症スペクトラム児への支援について、特に教育・保健分野を中心に地域における実践力の強化を図った。(3)専門職・専門機関の調査については、本年度は地域の保育・教育・福祉現場の専門職へのインタビュー調査の準備を行った。(4)N市乳幼児健診における自閉症スペクトラム(発達障害)スクリーニングの結果を学会発表によって公表し、先駆的な取り組みを中心となり行っている神奈川県Y市の医師からも助言を頂いた。(5)N市立の幼稚園における自閉症スペクトラムをもつ子どもへの個別指導計画の作成及び実践を通して、保育・教育・保健分野の連携を実践し、それをN市の幼稚園改善研究事業として展開し、報告した。
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