研究課題/領域番号 |
20730367
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
木村 直子 鳴門教育大学, 大学院・学校教育研究科, 講師 (80448349)
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キーワード | 自閉症スペクトラム / 乳幼児期 / 乳幼児健診 / 個別の教育支援計画 / チームアプローチ / 地域のネットワーク形成 |
研究概要 |
本研究は、自閉症スペクトラムの子どもたちへの早期発見・早期療育にあたって、地域の保健師・保育士・幼稚園教諭のスムリズな連携によるチームアプローチ実現のためのデータベース構築を目的としている。具体的な研究の目的は以下の3点であった。(1)発達障害の子どもたちの早期発見・早期療育を地域レヴェルで実現するために、地域の保育・教育・福祉現場の専門職(保育士・幼稚園教諭・保健師)が、発達障害に関する正確な共通認識・共通理解を持ち、自閉症スペクトラム児への早期発見・早期療育のためのチームアプローチの必要性を認識し、綿密にディスカッションを行い、適切な支援をできる基盤を構築し、発達障害児及びその家族に対して専門職によるチームアプローチでサポートしていく必要がある。(2)乳幼児期に行動特性が出現する自閉症スペクトラムを対象に、早期発見・早期療育のために、地域の専門職によるチームアプローチに必要な自閉症スペクトラムの特性を整理・分類したデータベースの構築を目的とする。(3)職種の異なる専門職(教諭・保育士・保健師)が正確な知識や自閉症スペクトラムの子どもたちへの支援の理念を共有するために、乳幼児期の自閉症スペクトラムの行動特性から、支援の基盤となるようなマニュアルを作成する。 本年度の成果は、上記3点の目的を達成するための基盤を設定したことにある。具体的には、(1)国内外の事例及び情報を収集した。特に自閉症スペクトラムをもつ子どもと家族への支援の先駆的な地域(北海道S市・神奈川県Y市・大阪府S市・京都府K市・鳥取県T市)に積極的にアクセスし、地域の保育・教育・福祉現場の専門職の連携に必要な要素を検討した。(2)自閉症スペクトラム児への支援について、特に保健分野を中心に地域における実践力の強化を図った。(3)専門職・専門機関の調査については、本年度は地域の保育・教育・福祉現場の専門職との任意的なディスカッションに留まった。(4)N市乳幼児健診における自閉症スペクトラム(発達障害)スクリーニングを整備し、その結果を学会発表によって公表した。(5)N市立の幼稚園における自閉症スペクトラムをもつ子どもへの個別指導計画の作成及び実践を通して、教育・保健分野の連携の可能性を模索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)個別ケースにおいては、地域の保育・教育・福祉現場の専門職が、自閉症スペクトラムに関する正確な共通認識・共通理解を持ち、早期発見・早期療育のため、綿密にディスカッションを行い、適切な支援をできるようにチームアプローチでサポートしていく体制が整いつつある。 (2)早期発見・早期療育のために地域の専門職によるチームアプローチに必要な自閉症スペクトラムの特性を整理・分類したデータベースを構築するため、現在データを収集中である。 (3)職種の異なる専門職が正確な知識や自閉症スペクトラムの子どもたちへの支援の理念を共有するために、実践レヴェルでのアプローチは実施している。 昨年度育児休業により中断した経緯から、計画遂行の中でも、フィールド内での展開に遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集した基礎データと実践より得たデータに基づき、本年度は、以下の3点の研究計画を発展させ遂行することによって、本研究の目的を達成することを目指す。 (1)これまでに作成した乳幼児期の自閉症スペクトラムの行動特性を「自閉症スペクトラムの行動マーカー」として精度の高いものとするために、家族や専門職、専門機関にフィードバックし、再検討する。 (2)「自閉症スペクトラムの行動マーカー」の内容を倫理面等に十分配慮した形で、公表・公開できるよう体裁を整える(啓蒙書・啓蒙パンフレットの作成)。 (3)チェックリストのような「自閉症スペクトラムの行動マーカー」を公表するだけでなく、乳幼児期の自閉症スペクトラム圏にある子どもとその家族への支援につながるような内容の冊子を配布し、家族や専門職の援助につなげていく。
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