本研究の目的は、ホームレス(野宿生活者、元野宿生活者)に対象を特化した支援資源(「自立支援」)資源が未整備な地域におけるホームレスの形成・脱却過程の実態や課題を明らかにするとにある。この目的を達成するために、本研究期間(平成20〜22年度)において、九州の地方都市における実態調査を実施し、分析結果を取りまとめる計画を設けた。 本研究期間の1年目にあたる平成20年度、「自立支援」資源を持たない地方都市として大分市を位置づけ、同市におけるホームレスを対象とする聞き取り調査を実施した。大分市ではホームレスがテント等に定住しておらず、調査対象者へのアプローチが比較的困難であることから、大分市街での炊き出し等の機会を活用して、同一の調査対象者に対して複数回の聞き取りを実施した。なお、平成20年秋頃から大分県内で「派遣切り」・雇い止めに遭ってホームレス状態に陥った者も増えてきていることもあり、聞き取り調査は現在も継続中である。 さらに、大分県・大分市内におけるホームレス支援の現状を明らかにするため、大分県内の福祉事務所や生活保護施設、大分市内の支援団体や医療・福祉機関に対して聞き取り調査を実施した。 上記の通り、平成20年度は、主に大分市内のホームレスや関連機関を対象した聞き取り調査を実施した。調査の実施状況は、交付申請書に示した研究実施計画に比べて順調といえる。日本のホームレス研究において、地方都市を対象とした実態・支援のありようの本格的分析は手薄となっており、しかも大分市を対象とした調査研究は初めての試みである。研究成果の発表にむけて、調査結果の分析を進めているところである。調査や分析の結果について、その中間的な報告は、雑誌論文やいくつかの各種発表機会で行った。
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