本研究の目的は、ホームレス支援に用いられる資源の乏しい地方都市におけるホームレスの形成や脱却の過程に着目して、地域ごとの問題状況の特質を描き出すとともに、各地城のホームレス支援や社会福祉行政の抱える課題の所在・動向を明らかにすることによって、ホームレス自立支援法の政策評価に資することにある。 本研究期間の2年目にあたる平成21年度は、ホームレス支援資源の乏しい地方都市の事例として大分市を取り上げ、大分市内のホームレスの実態分析を行ったとともに、大分市におけるホームレス支援策の展開状況および支援課題を明らかにした。 平成21年度の主な研究成果は、「地方都市におけるホームレスの実態と支援策の展開-支援資源の未整備な地域におけるホームレス問題」(大阪府立大学大学院社会福祉学研究科2009年度博士論文)である。本研究の成果を博士論文としてまとめることは、本研究計画の申請時の成果目標であり、それを達成することができた。本論文の主な意義は、第1に、これまで十分に解明されてこなかった地方都市のホームレス問題について、筆者が自らホームレス支援に携わりながらアクションリサーチの手法によって分析したことである。第2に、一地方都市もしくは一地域のホームレスの実態および支援策について、総合的に明らかにしたことである。第3に、日本のホームレス支援や社会保障のあり方について、一地域のホームレスやホームレス支援の実態をふまえて評価を行ったとともに、求められるホームレス支援の枠組みや支援課題を提示したことである。 さらに、ホームレス支援における居住環境やケアの確保に関して、平成21年10月に厚生労働省に設けられた「無料低額宿泊施設等のあり方に関する検討チーム」を傍聴し、ホームレス支援の政策枠組みの検討を行った(成果は年度をまたいで、平成22年4月に刊行された)。それに関連して、首都圏の複数の支援団体を訪れて現場視察を行った。 本研究で計画されている、九州等の他地域を対象とした調査研究については、最終年度である平成22年度に実施する予定である。
|