初年度にあたる平成20年度は、オーストラリアのソーシャルワーク理論研究およびオーストラリアを中心とする西欧諸国の文化研究・社会学・移民研究に関する文献データベースからエスニック・アイデンティティ、多文化、移民に関する用語の検索、整理分類を現地研究協力者と共同で行った。ソーシャルワーク理論、特にポストモダニズムの影響を受けたクリティカル・ソーシャルワーク理論が既存の近代のソーシャルワーク理論にどのような影響を与え、マイノリティをどのように論じてきたについてテクスト分析を行った。ソーシャルワーク理論研究のテクスト分析結果の一部を利用し、クリティカル・ソーシャルワーク理論がオーストラリアの教育カリキュラムに与えている影響について英語論文にまとめ、平成21年3月にオーストラリア学会誌に掲載された。また、オーストラリアのソーシャルワーク理論におけるエスニック・アイデンティティをめぐる理論言説が多文化ソーシャルワーク実践にどのように影響を与えているかを検証するために、オーストラリアにて移民定住支援に関わるソーシャルワーカーおよびエスニック組織代表にインタビュー調査を平成21年2月に行った。テクスト分析結果およびインタビュー調査結果の中から日本人コミュニティ福祉組織のケーススタディについて平成21年11月に開催されるアジア太平洋ソーシャルワーク教育会議(20THASIA-PACIFIC SOCIAL WORK CONFERENCE)にて演題発表する予定である。
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