中山間地域における独立型社会福祉士へのインタビューと実践基盤となる地域のフィールドワークを通して、(1)中山間地域における「独立型社会福祉士」の有効性、(2)中山間地域の活性化に向けた地域づくり、(3)社会福祉士のアイデンティティの確立の3点から「独立型社会福祉士」の可能性と不可能性について考察することを目的に調査を行った。分析方法は、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて行った。 平成20年度は、インタビュー調査の依頼を5月から始め主に8月から3月まで調査を行った。実施状況は、8月に青森県1名・北海道2名、9.月に山口県9名、12月に岡山県2名、1.月に愛知県1名、3月に広島県3名・山口県3名(9月の補足調査)であった。調査が可能な地域を優先したため、予定していた地域(北海道、青森県、福島県、静岡県、愛知県)とは少し異なってしまったが、12名を上回る17名に対して調査を行うことができた。研究成果として、社会福祉士の独立過程に焦点をあてた質的調査からは、社会福祉士のアイデンティティにおける概念を抽出することができた。具体的には、独立する過程における葛藤が重要なポイントとなっており、「専門的価値と個人的価値のバランスを保ちながら実践する」といった概念が見出された。また、地域づくりの点については、インタビューと各地域におけるフィールドワークから、独立型社会福祉士の多くは、地域特性(人口・産業・歴史・文化・地理など)へ配慮した実践形態を形成していることが確認でき、地域づくりを明確に意識した実践は少なかったものの、実践の延長線上に地域づくりを見出すことができた。
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