本研究は、福祉人材育成の理論及び方法の確立を目指し、都道府県・指定都市社会福祉協議会等の研修事業実施機関における、「研修カリキュラム」に焦点をあて、カリキュラムデザイン(研修の体系化)、インストラクショナルデザイン(研修プログラムの開発・評価)及び、そのプロセスを包括する概念である「福祉人材育成カリキュラムマネジメント」の理論構築及び方法について具体的に提言することを目的とするものである。 平成21年度は、研究者が講師を担当した、B県社会福祉研修事業実施機関における研修を対象に、モデル事業を実施した。具体的には、前年度に整理したインストラクショナルデザインの手法を実験的に援用し、その効果について検討を行った。 また、研修企画に必要なデータ収集のためレディネステストを行い、その結果に基づき研修プログラムを構築した。さらに、研修実施直前及び直後における、研修内容の評価を具体的指標に基づき実施し、その評価結果について分析を行った。そして、各プロセスにおける形成的評価を実施し、研修担当者としての業務について精査した。 研究結果から、PDCAサイクルに基づく研修事業を展開することにより、エビデンスに基づく人材育成方法の構築が可能となり、研修事業実施機関の業務プロセス及び各担当者の成果の蓄積及び共有が可能となることが実証できた。また、個々の研修のインストラクショナルデザインのプロセスについて明確化することにより、研修の体系化としてのカリキュラムデザインのプロセスが検証され、両者の相関関係によって、カリキュラムマネジメントサイクルが構築されていることが明らかとなった。
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