平成21(2009)年度は、平成20年度に引き続き、明治期を中心として、東京感化院の日誌類の解読及び東京市養育院感化部(後の井之頭学校)の機関誌『東京市養育院月報』の解読を行った側両施設の収容児に関する記事を比較、検討したところ、入所児の境遇などに大きな違いのあることを発見した。具体的には、家族構成や学歴、学力などの違いである。その詳細については、平成22年度以降に論文としてまとめる予定である。 また、明治期から大正期にかけての東京感化院及び千葉感化院の入所児の記録を検討した結果、時代によって感化院職員による児童の素行不良化の原因分析に変化・特徴のあることを発見した。遺伝、低能といった医学の影響や映画といった新しい風俗の広まりなどにともなって、職員の不良少年観はしだいに変化していったのである。それにともなって、感化教育のあり方も議論されるようになった。当時の精神医学の研究結果などを踏まえるべきでるというのである。その詳細については、本年度の社会事業史学会大会で口頭報告を行った。現在、その際の質疑応答を踏まえ、論文としてまとめつつある。 なお、明治期から昭和期にかけての児童福祉に関する資料も購入し、近代における児童保護に関する思想の変遷を確認しつつある。近代における家族観、子供観を踏まえることで、不良少年の更生に関する歴史を理論と実践の両面から分析し、総合化をはかりつつある。
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