本研究は、異なる専門職が関わる認知症高齢者の在宅環境配慮実践時に有用なツールとなりうる「認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラム」を開発することを目的に実施した。 「認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラム」は、「(1)介護支援専門員や家族介護者が、(2)認知症高齢者の在宅生活や在宅ケアを支える在宅環境配慮実践にあたって、(3)適切なアセスメント、ケア目標・生活目標に沿った在宅環境配慮実施およびその評価という明確なプロセスに基づいて行うことにより、(4)認知症高齢者と家族介護者の生活の質の向上に寄与することを目指すプログラム」である。 平成21年度の研究では、(1)在宅環境配慮の現状と課題を把握するチェックリスト開発、(2)「認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラム」の開発に取り組んだ。(1)については、平成20年度の研究により検討した在宅環境配慮の目標となりうる8次元を大項目とし、各次元に対する認知症ケアに関わる専門職100名を対象に意識調査を行った。その結果をもとに具体的な在宅環境配慮の例示を伴うチェックリストを作成した。(2)については、平成20年度~21年度の研究成果を踏まえ「認知症高齢者のための在宅環境配慮実践プログラムの試案を作成した。 本研究によって、従来の「身体ケアモデル」に基づく支援だけではなく、「認知症高齢者ケアモデル」について、在宅環境配慮という視点からのアプローチの可能性が見いだせたといえる。 一方、認知症の程度や日々変化する症状、経年変化に対応する在宅環境配慮を実践してゆくために有用なプログラムには成りえず、今後の課題といえる。また、実施した在宅環境配慮の経過・効果を評価する尺度の検討については、量・質ともにより多くの知見・データ収集を重ねて有用な指標を開発する必要性が明らかになった。
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