昨年度までの実績で、当該研究の新奇性が際立ったことを踏まえると、本年度は介護に係る職務の多様性について論点の反復を前提とした架橋的な論議の取組みを重視する必要性があった。訴訟事案の議論について質的に分析する修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを採択的に取り入れつつ、ステイクホルダー分析の手法を応用的に用いた。つまり、(1)平成21年度までにまとめている研究成果をもとに研究の順次性を検討(2)介護専門職におけるADRの可能性について、その認識度を文献調査(3)介護専門職における法的素養を準法律家の条件モデルとして構築(4)データベースを用いたサンプリングによる方略の実証(5)方略に貢献的なソーシャルスキルの抽出(6)各学会への参加(発表を含む)である。我が国において介護専門職がその業態を複雑にしながらその過負担に翻弄される実態を、いくつかの視座で整理しつつある。我が国の介護専門職がパラリーガルとしての実相を示す可能性が、その具体的な方略の実際に即する検証とともに示されたので、可能なスキルの行為規範が示唆されうるものと考えられる。パラリーガルとしてのスキルについては、介護専門職による人権擁護の可能性が発展的に実証されて応用されると考える。将来的な研究の発展性に鑑みると、今回の研究では、パラリーガルとしてのアプローチング及びローヤリングについての方途形成の可能性を明らかにすることで、構造化につなげることが重要である。これらの実態がいかなる相互関係にあるかをも知りえるために、質的な調査をあわせて行なって理論化につなげたところである。
|