平成23年度に実施した調査・研究により得られた知見は以下の通りである。 まず、環境施設のコンフリクト・マネジメントで用いられるリスクコミュニケーション手法が、精神障害者施設におけるコンフリクトの合意形成に対しても有効であることが明らかになった。さらに、リスクコミュニケーションが最終的に目指すものはコンフリクト関係者間の信頼の醸成であり、精神障害者施設においてもコンフリクト当事者間の信頼の醸成を目指す取り組みが有効であることを指摘した。また、「信頼」が施設コンフリクトの合意形成に重要な影響を及ぼしていることから、これまで施設コンフリクト解消のために必要だと考えられてきた施設および利用者への理解は、施設コンフリクトが解消されて合意形成に至り施設が開設された後に、時間をかけて形成されるものであることを指摘した。そして一般的に、「信頼」の醸成には長期間にわたる安全実績と多大な努力を必要とする一方、その崩壊は一瞬の事故によって簡単に生じるとされてきたが、長い時間をかけて醸成された「信頼」は、一つの事故などでは簡単には崩壊しないということを明らかにした。また、施設建設後に施設を媒介とした「つながり」がみられることを指摘し、これまで、いわゆる「迷惑施設」として認識されることの多かった精神障害者施設にも「人と人とのつながり」という新たな資源を形成する要素となりうる可能性があることを示した。
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