平成20年度は、児童養護施設経験者、児童福祉司、児童養護施設職員に対する予備調査の実施および児童養護施設職員のインタビュー本調査に着手した。同年10月から12月にかけて6名の児童養護施設職員にお話をお伺いするなかで、施設の個別性による差が大きいことから府内の地域ブロック、施設規模に考慮してバランスよく調査を実施する必要があることを実感した。予定していた他の対象者のインタビューを実施する前に、まずは児童養護施設職員のインタビュー調査を集中して行うこととし、平成21年2月に追加の依頼を経て府内の3ブロック4名ずつ12名、施設規模、性別においても非常にバランスのよい12名というサンプリングとなった。 平成20年度末にかけては、インタビューの音声記録を逐語録化するとともに分析をすすめた。児童養護施設職員のインタビュー調査結果においては、『権利ノート』を導入したことによる施設体制の変化および児童養護施設職員の意識変革について多く得ることができた。これらの変化や意識改革の過程は、既往の研究において明らかでなかった点である。加えて、児童養護施設職員の意識が変革されたからこそ生じた葛藤に関する語りも多くあった。今後、追加のインタビュー等を実施しながら12名の児童養護施設職員の語りの分析をすすめていく。平成21年1月8日に厚生労働省より出された「被措置児童等虐待対応ガイドライン(案)」では、『権利ノート』の重要性が再度指摘された。大阪府では、『権利ノート』の作成から10年以上の年月がたっている。その実践現場に身を置いてきた児童養護施設職員の語りを分析することにより、児童養護施設における子どもの権利擁護を保障するために必要な諸条件についての知見が得られると考えている。
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