【背景】諸外国における先行研究では、自殺に対する態度(認知・行動・感情の3要素で構成される概念)が、自殺ハイリスク者への支援行動に影響することが報告されている。しかし、ソーシャルワーカーの自殺に対する態度についての研究は国内でも海外でも実施されていなかった。【目的】ソーシャルワーカーの自殺に対する態度に影響する要因を明らかにすることを目的とした。【方法】自殺対策に関する研修やセミナーに参加したソーシャルワーカー46名を対象として、質問紙による予備的調査を実施した。使用した調査票は、自殺に対する態度を測定するAttitude toward Suicide scale (ATTS)日本語版(平成20年度科学研究費補助金若手研究(B)で開発)、基本属性、これまでの自殺に関わる臨床および個人的経験、自殺対策に関する研修やセミナー等への参加経験などの質問項目で構成した。【結果】臨床上、自殺念慮のある人や自殺企図者、あるいは自殺既遂者と関わった経験がある人は44名(95.7%)だった。またこれまでに自殺対策に関する研修やセミナー等へ参加したことがある人は23名(50%)だった。過去に自殺対策に関する研修やセミナー等への参加経験がある人はない人に比べ、自殺に対してよりタブー視しない傾向にあった。【考察】臨床上、9割以上のソーシャルワーカーがサービス利用者の自殺念慮や企図、既遂を経験しているにもかかわらず、自殺対策関連の研修等への参加経験者は5割にとどまっていた。一方、自殺対策に関する研修等への参加経験があるソーシャルワーカーは、参加経験がない人に比べ、自殺に対してより適切な認識を持っていた。そのため、ソーシャルワーカーがより効果的に自殺対策に取り組むための教育的介入が重要であると考えられた。なお本調査を目的として、2980名のソーシャルワーカーを対象とした調査を実施し、データの収集を完了した。
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