比較的小規模で、実施が容易なエピソード法調査を、学生を対象として3回実施した。本研究では集団に対する長期的利得関心が調整変数となって手続き的公正による心理的効果が変化すると予測している。すなわち、社会心理学における集団研究によれば、集団のメンバーは集団から金銭などの経済的価値、または生きがいや自己の成長といった非経済的価値を取得できるため集団のメンバーとしての自覚を強めるとされてきた。これは、集団成員は集団が長期的、安定的に利得を供給するシステムであるごとを期待しているとことを意味する。このため、集団のメンバーは集団意思決定や集団内紛争が生じた場合、その決定や紛争の結果が自己に有利であるか否かに関心を寄せると同時に、その過程における集団の機能にも注目する。そして、問題を公正に処理されることは、集団のメンバーにとって集団が正常に機能していることの指標になると考えられる。そこで、本研究では、長期的利得に対する期待が強いメンバーほど集団内手続きの公正さに関心を寄せ、公正さを感じた程度に応じて集団に対する同一化を強めると予測した。これらのこの仮説は、学生の大学生活や社会生活を題材とする調査において一定程度支持された。このような長期的利得に焦点をあてた仮説は、従来の手続き的公正研究においては省みられることがなかった主張であり、仮説が支持されたことは、手続き的公正研究に新たな視点をもたらすことが期待できる。 現在、この結果を学術論文としてまとめている途中である。また論文執筆に先立って、大学生、一般市民を対象とする講演会や、研究者による二つの研究会でこの結果を公表した。
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