研究概要 |
これまでに,夜勤中の仮眠には夜勤従事者の眠気を低減させ,エラーの発生を抑制する効果があると報告されている.事故の防止には,エラーの発生自体を減らすことともに,自らの犯したエラーに気づきエラーを修正することで,被害を最小限にとどめることも重要である.前年度には,Elror-Related-Negativity:ERNとerror-Positivity:Peを指標として用い,深夜1:00から2:00の仮眠が,覚醒時間延長中におけるエラー反応後の認知的処理機能に与える影響を検討した.本年度には,覚醒時間延長中におけるエラー反応後の認知的処理機能を測定し,前年度のデータと比較することで,エラー反応後の認知的処理機能に与える仮眠の効果について,より詳細に検討することを試みた.実験では,前年度の実験において仮眠をとっていた時間帯(1:00~2:00)に休憩を被験者にとらせ,前年度と同様21時,深夜2時,3時の3回,認知課題を実施した.その結果,深夜2時,3時の回では,エラーへの注意配分量の低下が確認された.さらに,反応時間,正答率とともに,ERN, Peの振幅を,被験者に仮眠をとらせた際のデータ(昨年度に実施)と比較したところ,深夜の1時間の仮眠は,覚醒時間の延長にともなう正答率の低下を緩やかにする効果はあるものの,エラー反応後の認知的処理機能に対しては効果が認められないことが明らかとなった.今後,様々な仮眠のスケジュールの効果をより詳細に検討する必要はあるものの,本研究の結果は,深夜帯における1時間の仮眠効果が限定的であることを示すものである.
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