現代においては、男女雇用機会均等法に見られるように、男女平等社会の実現に向けての施策が進められている。しかし、どのような状況であれば男女平等を捉えるのかについては多様な考え方があることが明らかにされており、家庭や職場において、望ましい男女の役割のあり方についての合意を得ることが困難であることが示唆されている。そこで本研究では、家庭や職場において、男女の役割に関してどのような意見の齟齬を感じているのか、また意見の齟齬を感じた場合に、どのように対処しているのかを検討するために、就労している女性25名(累計)を対象に面接調査を行った。その結果、職場において、会社が女性の就労を積極的に支援している場合には、職場で意見の齟齬を感じていた者はほとんど見られなかった。しかし、会社が女性の就労を積極的に支援していない場合には、給与体系や仕事といった会社の構造において男女で違いが見られる点や、意思疎通のやり方などの対人関係において男女で違いが見られる点に、齟齬を感じている者が見られた。意見の齟齬を感じたときの対処方法として、会社に働きかけて状況の変革を引き出す、モデルとなる女性の働き方を見習う、伝統的な女性役割を演じることで自分が望む状況を引き出すなどの積極的対処行動や、職務をまっとうすることに専念するなどの維持的対処行動などが見られた。また、家庭では、家事や育児の分担において、夫との意見の齟齬を感じている者が見られた。意見の齟齬がある場合には、夫とコミュニケーションを通じての対処や、実家の家族や保育所や近所の人などの第三者のサポートを通じての対処などが見られた。
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