研究概要 |
現代日本では男女共同参画社会基本法が制定されるなどのように、男女平等社会の実現に向けての施策が進められている。一方、どのような社会のあり方が男女平等であるのかについては、さまざまな意見があり、対立している状況さえ見受けられる。本研究では、多様な男女平等観を把握するための「男女平等の判断基準」の理論的枠組みを通して、男女平等に関する合意形成の促進要因と妨害要因を検討することを目的とする。 研究代表者はこれまでに政治や行政を携わる人々を対象として、男女平等社会実現という社会新作に関する意見の対立状況を分析するものであったため、一般の人々における社会的施策に関する考え方や、日常場面で経験する男女のあり方に関する意見の対立状況については、明らかではなかった。そこで、本研究では、第一に、男女平等社会実現に向けての社会的施策に関して、政治や行政に関わる人々以外における意見の対立状況(社会レベル)について「男女平等の判断基準」の視点から分析する。具体的には、人々の態度形成に影響を与えると指摘され、かつ日常的に接触する媒体であるテレビやインターネットなどを分析し、男女平等社会の実現のための施策をめぐって行われている議論における意見の対立の様相を検討する。 第二に、一般の人々が日常場面で経験する男女のあり方に関する意見の対立状況(個人レベル)を「男女平等の判断基準」の視点から分析する。身近な他者(夫や上司)との望ましい男女のあり方に関する意見の違いが、女性のキャリア形成を妨げたり、就労ストレスを高めたりすることが明らかにされている(金井,1994など)。そこで、主に女性に着目して、女性が日常場面で経験する夫や上司との男女のあり方に関する意見の対立や差異状況について、検討する。 第三に、第一、及び第二の検討を行うことによって、男女平等に関する意見の対立状況を生み出したり、解消したりする要因を分析する。第四に、以上の検討を行うことによって、男女平等に関する合意形成を促す過程モデルを構築し、実証的データに基づいて、男女平等に関する合意形成を促進する方策を提言する。
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