研究概要 |
本年度は, 基礎的研究として二つの研究を行った。一つは, 日常生活での「謝罪」経験に関する研究であり, もう一つは, 「怒りの対象となった」経験に関する研究である。両研究ともに, 過去の経験を想起してもらい, 感情や行動について自由記述を求め, 抽出と分類を行った。 その結果, 謝罪経験では, 自分が謝罪した経験について, 相手から許し得られない場合もあることが示された。また, 自分の感情としても, 謝罪することによりネガティブな状態から抜け出していることが多い一方, 不安や罪悪感を喚起することも示唆された。逆に, 謝罪された経験については, 相手からの許しを得ている場合のみ記載され, 謝罪した経験とは異なる結果となった。また, 謝罪された後には許しや不快の軽減を感じていることが最も多かったが, 落胆や罪悪感を喚起することも多かった。このように謝罪により許しを得ることで, 相互にネガティブ状態から脱出できる可能性が示されたが, 逆に, 罪悪感を喚起することもあり, 必ずしも謝罪により状況が好転するとは限らないことが示唆された。 また, 「怒りの対象となった」経験に関する研究では, 罪悪感や反省以外に自らも怒りを喚起しやすいことも多いことが示された。行動としては, 謝罪が最も多く抽出されたが, 一方で自らの怒りを表出するような行動を見受けられた。相手の怒りを緩和した行動としては, 謝罪, 問題への対処, 償いなどの積極的な行動以外に, 時間をおく, 相手と距離をおくなどの行動も抽出された。
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