研究概要 |
前年度に引き続き,日常生活における欺瞞性認知の一端を明らかにするための日記法調査を実施した。研究参加者23名(前年度収集分含む,男性7名,女性16名)にICレコーダーを1週間携行してもらい,日常生活において欺瞞性認知が生じた際,生起後できるだけ早くに,その内容について正確に録音してもらい,1週間の日記携行期間終了後事後面接を行い,気づいたことなどについて内省報告を求めた。提出は音声ファイルではなく,内容を記載したExcelのファイルのみである(倫理的配慮)。結果,研究参加者23名の欺瞞性認知の平均回数(1日平均)は,1.53回(最大4.71回,最小0回)であった(研究参加者毎に算出した1週間の平均の平均)。先行研究とほぼ同じ値であった。 次に,上記日記法調査で収集された欺瞞場面から,質問紙にて提示可能な7場面を抽出し,欺瞞度評定(各場面につき4項目,7件法)を求める質問紙調査を実施した。研究参加者は82名(うち,問題のあるオブザベーション3件を削除したので分析対象はn=79。男性29名,女性50名)であった。α係数は0.75から0.83の範囲内にあり,満足のいく値であった。欺瞞度得点は,4項目の単純加算を用いた。最大の欺瞞度(平均18.11)を示したのは,店員と客のやりとりの場面であり,最小の欺瞞度(12.58)を示したのは,授業が始まる前の着席行動に関する学生同士のやりとりの場面であった。 これまでの欺瞞研究では,仮想的に構成された場面を用いることが多かったが,以上の質問紙調査のように,日常生活をもとに実際に収集した場面を用いたことに意義があろう。
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