本研究は、若年者の就業に向かう自信獲得メカニズムを明らかにすることを目的としている。今年度は、主に下記の3つの点について検討した。 第1に、「若年者の就業に関わる自信の心理的構造」を明らかにするため、兵庫県の就業支援事業および長期インターンシップに参加した大学生を対象にヒアリング調査を実施した。それをもとに、「若年者の就業に関わる自信」の測定尺度を考案した。 第2に、「成功および失敗経験に対する価値観」を測定する尺度を開発した。 (1) 成功観の構造を明らかにするため、44名の大学生に予備調査を行い、その記述内容についてKJ法を実施した。成功観には大きく「成功の原因」(努力や困難さ)、「成功の内容」(目標達成など)、そして「成功の結果」(肯定的感情、成長など)から構成されていることを明らかにした。 次に、予備調査の結果を基に成功観を測定する尺度を作成し、尺度開発のための調査を実施した。これらの一連の成果は2009年度の学会で発表予定である。 (2) 失敗観は「ネガティブ感情価」、「学習可能性」、「回避欲求」、「発生可能性」の4側面で構成されていることを確認した。そして、失敗観(特に学習可能性)は、出来事の重要性が高い失敗場面においてほど、その後の対処行動に強く結びついていることを明らかにした。 第3に、上記の成果を踏まえ、若年者の就業に関わる自信獲得メカニズムを実証的に検討している。NPO若年者就業支援団体の協力のもとに、長期インターンシップ(6ヶ月)に参加している大学生を対象に、成功および失敗価値がインターンシップ経験からの学習および自信獲得にどのようなインパクトを持っているかについて縦断的調査を実施しているところである。
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